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Hideyasu Matsuura

減損損失の判定における 正味売却可能価額

更新日:9月17日

この記事は投稿当時の内容で、現在の実務上の取り扱いとは異なります。最新の情報はこちらからご覧ください。


機械設備の減損損失の判定の評価を受任することがあるが、その場合の「正味売却価額」の意義について迷うことが度々ある。 備忘として当方の見解を含めてまとめておきたい。

 


評価上問題になる点としては

①正味売却可能価額は公正価値か清算価値か? 回収可能価額を正味売却可能価額とした場合、それは公正価値か清算価値かということが問題になる。 指針では「時価とは公正な評価額をいい、通常、それは観察可能な市場価格をいう」としている。したがって公正な評価額というのは公正価値と考えて差し支えない。

求めるものが「回収可能価額」とされていることから、必ず売れる価格をよりどころにした価値で通常清算価値が回収可能価額であるとする見解、これを根拠に『通常清算価値は公正価値のひとつである』とする見解もある。
清算価値は他者から売却を強制されることを前提としており、担保権の行使や破産、資金繰りの行き詰まりなどによって特に短期に換価を要請する場合が強制清算価値、換価を強制されるが買主を探す時間的猶予が与えられる場合には通常清算価値となる。他者から強制された売買が「公正」であるとするのには無理がある。

②正味売却可能価額は"売れる価額"であり機械買取業者の提示する額か?

回収可能であることを最重視すれば機械買取業者の提示する価額が確実で固いといえる。その価額で引き取ってくれるならファクトベースだからである。

しかしながら、機械買取業者の買取価額はいわば、仕入れの価格といえる。動産の評価の場合特に注意しなければならないのは取引レベルの問題である。同じ動産の価格でもメーカーが問屋など卸売業者に売却する卸の価額と卸売業者がエンドユーザーに販売する小売の価額は価格帯が異なる。この売手と買手の属性の違いによるマーケットを取引レベルという。勿論、評価の対象物やその特性によりどのレベルで評価すべきかは異なるが、買い叩かれたり足元を見られたりすることのない公正価値として生産設備の減損評価であれば、エンドユーザー目線の評価の方が妥当である。

③処分費用見込額の内容と範囲をどのように考えるのか。具体的には売却を想定した場合に撤去費、運搬費用は売手、買手のどちらに帰属するかという問題が起こる。仮に売却を想定した場合で運搬費用は売手負担とすると、どこまでの運賃を見積もるかという問題が起こる。売却を想定するとしてもどこの誰に売却するとまで詳細な想定はなかなか難しい(予め売却先を決めておくのであれば別であるが、減損の場合そこまで想定していることはないどころか、減損発生の秘匿を求めるクライアントもおり精緻な想定は困難な場合が多い)。

日本の場合、中古市場での取引はオープンではないが、現実の取引慣行を勘案してシナリオを想定すること、各アプローチの性質に応じて処分費用見込額減額の要否を判断する必要がある。

 

​減損損失認識の判定のための時価評価について https://www.frontier-valuation.com/impairmentguide

 

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