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林業を資本の循環に乗せられるか

最終更新: 2019年6月4日

林業では植林して用材として活用できる木に育つと、伐採して搬出し、用材として売却される。では、伐採後の山林はどうなるだろうか。   少し前にこのような記事を目にした。   国有林伐採後放置法案? 再造林も義務なしの仰天(田中淳夫) - Y!ニュース https://news.yahoo.co.jp/byline/tanakaatsuo/20190508-00125250/


民有林では再造林がされないケースが多くなっている。再造林しても採算に合わないからだ。 採算が合わない大きな理由のひとつが、伐採・搬出のコストが高くつくことにある。

ここのところ様々な業界で人手不足が叫ばれているが、林業は特に深刻な人手不足に悩む産業のひとつである。日本の山林は急斜面が多く、体力的にもハードな上に危険も伴うため、人手が集まらないほか、そもそも急斜面は作業自体が困難であり、効率が良くない。 こうした事情もあり、特に急斜面で管理や伐採が困難である土地への再造林は避けることが多くなっている。そうすると、林業の生産力低下や水源涵養の観点から第2次大戦終了後の住宅需要急増期には木材を確保するため、かなり無理な植林がなされたこともあり、そもそもが供給過剰だったという味方もある。また、伐採後の山林も動物による食害さえなければ、自然林が形成されていくため、砂漠化してしまうような心配は少ない。

それ以前に問題になっているのが、用材として活用できる木が山にあるのに、林業従事者の不足でそれを伐採できず、活用できないジレンマである。また、用材の供給が不安定であるため製材所などの木材加工業者が設備の更新に消極的で、旧式の機械をメンテナンスしながら使用していて、加工技術の向上による木材の品質向上が阻まれている問題もある。このところ、木材を多用する有名建築家の建築物が国内各地で建設されているが、デザイン性の高い特殊な形状に加工できる機械が日本にはなく、意匠変更を余儀なくされるケースもあると聞く。 日本の国土の約7割が森林であるが、森林に関わる資本の循環はほとんど壊滅的状態である。木材を伐採しても採算が取れず、資産としての価値も低くなり、投資やファイナンスが生まれない。実際に、上場企業で森林に本格的な投資をしている企業は数社のみである。国は森林環境税の導入を目指しているが、森林で資本の循環が生まれるかはまだ未知数である。SDG'sに適うような持続可能な林業へのハードルはまだ高い。

原案 天田 淳一 林業技士(森林評価部門)・不動産鑑定士 構成 松浦 英泰 フロンティア資産評価研究会

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