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税務署だけを見つめて潰れてゆく会社

更新日:2019年11月11日

ここのところ、M&Aや事業継承、事業再生のセミナーに参加したり、Facebookでもコンサルティングに携わる方をフォローしたりしているが、共通して感じることがいくつかある。    特に中小企業であるが、会計制度の違いが分かっていない人が多いことに驚かされる。中には税理士でもこの違いに気付いておらず(気付いているが面倒だから無視しているのかもしれない)、節税ばかりに走って会社の財務を毀損しているようなケースもあるようだ。   会計には財務会計、管理会計、税務会計など、目的に応じた会計がある。

wikipediaでは以下のように解説している。

・財務会計(ざいむかいけい、英: financial accounting)は、財務諸表を核とする会計情報を、企業外部の利害関係者(株主、債権者、徴税当局など)に対して提供することを目的とする会計である 。
・管理会計(かんりかいけい、英語:management accounting)は、企業会計の一種。主として、会計情報を経営管理者の意思決定や組織内部の業績測定・業績評価に役立てることを目的としている。

一方、税務会計は次のように定義されている。こちらはクラウド会計ソフトfreeeの定義によるものである。

税務会計とは、企業の課税されるべき所得額を算出するための会計です。 法人税法などの規定に従って行われる会計で、国および地方自治体が課税する税金を計算するうえで用います。

税務会計は定義上広い意味では財務会計のひとつではあるが、株主・債権者(銀行を初めとする金融機関など)に向けたものを財務会計、納税のための会計を税務会計と括り直すことにする。   株主・債権者(銀行を初めとする金融機関など)に向けた狭義の財務会計の世界では、収益は多く、資産も多く見せることができれば、企業経営者にとって有利な方向に働く。 収益が多ければ株価は高くなるし、資産が多ければ金融機関はそれを担保により有利な融資をしてくれる。 一方、税務会計では収益は少なく見せた方が企業経営者にとっては有利な結果をもたらす。法人税は利益に対して課税されるものであるから、売上を少なく、支出を多くして利益を少なくする方向に持っていきたいと思うのが自然である。 つまり、両者は相反する方向性を有することになる。   ご存じの通り、税は国内すべての個人や法人に対して平等に課されるものである。従って、すべての国民あるいは企業は毎年税金を払わなければならない。法人税法は、収益・費用、損失について法人の主体性を重視しており、毎期終了後一定の間に税務署に決算を申告することになる。こうした考え方を確定決算主義という。確定決算主義では基本的には会社法による会計が準用されるものの、近年は税務会計と狭義の財務会計を区別する考え方が広がってきている。近年新聞などでも目にする「税効果会計」「繰延税金資産」といったものは両者の違いから生まれてきたものである。 かつては税務会計と狭義の財務会計の区別は曖昧であり、実務上は納税の義務と簡便性を重視して税務の方に重点が置かれることが多かった。一方で納税に重点を置きすぎると節税で利益が少なく計上されることになり、税負担が軽くなる反面、金融機関から融資が受けにくくなったり、信用力が低く表示されて新たな受注や取引先の開拓が困難になったりといった問題が発生する。 こうしたことを続けていけば会社の成長は妨げられてしまい、最悪の場合「税務署だけを見つめて会社が潰れてしまう」といったことになってしまう。

ただ、実のところ、こうした会計の性質の違いを良く理解している人が意外に少ないのだという。困ったことに税理士でも税務会計のことしか分からない人が企業経営の支援をやっていたりするという話すら聞くから驚きである。 時価評価というのは納税者の平等性が重視され画一的であることが好まれる税務会計より、企業実体のカレントな把握が求められる財務会計の方に相性が良い。海外に比べ不動産以外の評価が立ち後れているのはこのあたりが原因であるとかねてから言われてきた。   税金のことばかり気にしてはその性質上、事業の意欲にブレーキがかかってしまう。 企業経営者の会計リテラシーを向上させファイナンスに強くなることが経済活性化の重要なキーであるのは間違いだろう。

 

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