10月24日の日本経済新聞朝刊2面で、「太陽光、風への備えに甘さ」危険な飛散・倒壊、8年で90件 安全検査の規制に穴 というタイトルで、太陽光発電施設への法的な規制が甘かったため事故が相次いでいる現状を伝えている。 太陽光パネルは、地面あるいは屋根上などに架台を置き、その上に設置されることが通常である。こうした構造物は建築基準法の規制を受けることが多いが、太陽光パネルの架台の場合は架台の下に人が立ち入ることができる施設(主に架台下を駐車場として利用するものがある)を除いて、建築基準法の対象から外している。
2011年に太陽光発電を早期に普及させる必要があるから政府が建築基準法を改正したことに由来するものであるが、太陽光発電は経済産業省が推進するものである一方、建築基準法を所管するのは国土交通省で、国土交通省側も積極的な規制を打ち出さなかったともいわれている。結果として建築確認や強度計算が行われずに発電施設を設置することが可能になってしまったため、太陽光発電協会の調べによれば、調査した発電施設のうち3割の施設で強度不足が疑われたという。 手間のかかる建築確認などの手続きが不要となり、設置にかかる手間とコストも圧縮され、全国各地で太陽光発電施設が大量に出現することになったのであるが、その分、雑な設計や電気や土木のすり合わせの必要な工事を経験の浅い施工業者が担当したことによる施工不良などの問題点を残し、最悪の場合、発電所の近隣を巻き込むような事故を発生させる事態に発展している。吹けば飛ぶようなソーラーパネルがある状態である。 自治体が形成強化に乗り出すケースのほか、第三者機関による評価の取り組みも進み始めている。特に保険会社は当初の想定以上に保険金支払いがかさんでいるため各社とも適切なリスク評価ができる体制を急ピッチで整備しつつあるという。 太陽光発電施設は、東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所の放射性物質漏洩事故後の2012年以降に政府による固定価格買取制度などの手厚い収入保証や設置についての規制の緩和もあって急増したが、こうした施設も設置後10年以上が経過し、特に設計に不備がある施設や施工の質が悪い施設は経年劣化と相俟って風による飛散や発火・炎上事故など発電所の外部に被害が及ぶような事故のリスクが高まる懸念、さらには固定価格買取期間終了後には買取価格が大幅に下落する可能性が濃厚であることから管理の不備を招く恐れもある。 太陽光発電を急速に増やしたものの、残念ながらその弊害も出ている。電力は長期、安定的な供給が必要不可欠で、この先10年くらいが不適切な施設を改修あるいは廃棄して安定電源として持続できるか勝負の時期になりそうだ。
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