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  • Hideyasu Matsuura

日本国内の機械設備評価人が減少傾向にある

更新日:2023年11月10日

先日、一般社団法人日本資産評価士協会(JaSIA)の社員総会があり、社員である私も参加した。


JaSIAは特殊な組織形態が採られていて、通常の資格者団体であれば会員であれば社員の地位も併有することが多いが、JaSIAの場合は会員の中から代表者が社員として選出される代議制を採っているため、社員総会に参加出来る会員が限られてしまう。

事務局から会員に報告が別途あるかもしれないが、情報共有の必要もあろうかと思い、総会で今後の課題として報告があったことの一部を個々で共有したい。


日本国内で評価人養成が始まったのは2011年からである。それ以前も米国で資格を取得した方が少数おられたものの、日本国内で不動産以外の動産の評価制度も整備する必要があるとの認識で、有志が米国鑑定士協会に掛け合って日本で日本語による評価人養成教育がこの年にスタートした。開講にこぎ着けるまでに実に7年もの歳月がかかったというから、当時の有志の皆様には敬意を表するところである。


第1回の養成講座の講義は2011年に開催され、不動産鑑定士、公認会計士や監査法人系のサービス会社、リース会社等から80名を超える受講者が集まり大盛況であった。翌年からは20人前後の参加者を集めて毎年開講している。

当初は不動産鑑定士が中心で、その後は監査法人系からの参加者が多かったものの、これらの人材確保が一巡したのか、ここ数年は養成講座に10名程度しか集まらない状況が続いているとのことである。

 

JaSIAの会員数も2020年に約140人だったのが、2022年に約120名に減少している。機械設備評価人資格を得るには最低限ASA会員(JaSIA会員であれば自動的にASA会員の地位も併有する)でなければならないので、会員数の減少は評価人としての活動をしているプレイヤーの数を知る上で参考になる。

厳しい後退局面にあることに疑う余地はないだろう。


厳しい現状に至ったいちばんの原因は評価需要の少なさであろう。当初、多くの業務が発生すると見込まれていたABL(動産担保融資)や国際財務報告基準(International Financial Reporting Standards:IFRS)に関連した業務は期待したほどではなく、減損会計やM&Aのための時価評価が細々とある程度で、残念ながら当初想定されたほどの業務量はないのが現実である。

このような状態であるので、他の事業との兼業で機械設備評価に従事されている方がほとんどであり、年会費や資格維持のためのコスト、労力も決して軽くはないため総合的に考えると割に合わないと判断し、撤退を選択する人も多い。昨今、円安で資格維持コストが上昇していることもあり、撤退の選択をする評価人が増える可能性もある。

その他にも、大企業に所属している資格者の場合、配置転換で全く別分野の担当になってしまったり、他の業務が多忙で機械設備は休業状態になってしまっている人も多い。

JaSIAも国内養成の資格者を輩出してから来年で10年になるが、10年経つと大きく変化するものだと実感する。当時牽引役だったベテラン層、シニア層の中には引退する方も出てきており、中堅層がベテラン、シニアになりつつある。また若手も中堅になってくることで、私も若手とは言いづらくなってきたと感じる。


今後の展望も必ずしも明るいとは言えない。近年は機械設備評価の認知度が徐々に高まってきて、ご依頼をいただく機会も徐々に増えてきてはいる。但し大幅に増加していると言うわけではなく、ゆっくりと成長と言った程度である。


昨今はどの産業でも人手不足で特に若手が不足していると言われている。18歳人口は1992年に205万人であったが、2023年は110万人でありほぼ半減している。我々の時代は「こんなに要らない」と思うくらいに人がいたし、採用する側の態度もずいぶん横柄だったのだが、最近は打って変わって新卒の採用は大変難しいとされており、選ばれる職能でなければ新しい担い手を探すのは難しい。実際に、評価人の間でも若手の不足、人材の枯渇を懸念する声は大きい。

成熟した産業なら、撤退が増えて生き残れば「残存者利益」を享受出来るのかもしれないが、成長途上の産業はプレイヤーが増えないとマーケットを拡大することは出来ないため、成長途上での同業者の撤退はあまり有り難い話ではない。


とはいえ、ただ「評価が出来ます」ではなかなかPR力は乏しい。困った問題に直面して何とか評価したいと言う人がいればお役に立てるのであるが、そうでない人には全く不要なサービスである。評価だけではなく評価から派生した仕事を開拓する必要はあるだろう。残念ながら「依頼者から指定された金額で評価書を作る」ことは許されない世界であるが、ご依頼をいただく皆様の「片付けたい用事」に対するニーズを的確に把握し、型に囚われないサービス展開を実施したいものである。

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