先日参加したセミナーで「TOKYO PRO Market」という株式市場があることを伺ったので、どのようなものか整理してみたい。
TOKYO PRO Marketとは?
東京証券取引所には第一部、第二部、マザーズ、JASDAQ、Tokyo Pro Marketの5つの市場がある。2020年8月25日時点では第一部が2,173社、第2部481社、マザース329社、JASDAQスタンダード663社、同グロース37社、そしてTokyo Pro Marketは36社である。(日本証券取引所グループ「上場会社数・上場株式数」https://www.jpx.co.jp/listing/co/)。
このうち、第一部、第二部、マザーズ、JASDAQの4市場は全ての投資家が参加できる市場であるが、TOKYO PRO Marketは市場参加者がプロ投資家に限定されている。 個人を含めた投資家が参加できる一般市場への上場は、投資家保護の要請が強いことから、上場には厳しい基準がある。具体的には株主数や利益等に関するもので、これ他の基準に適合をさせることと、適合していることを証明する書類を準備しなければならないため、上場までに3年程度の時間が必要となるが、市場に精通し、資金力も有する「プロ投資家」のみに限定するのであれば、上場のハードルを下げることができることから、より多くの企業に上場してもらうための市場として創設された市場が「TOKYO PRO Market」である。
上場に必要なJ-Adviser
TOKYO PRO Marketには上場に関する明確な基準がない。開示言語も日本語又は英語、監査人による監査証明も一般市場では2年間分必要なのに対し1年分で済む。内部統制報告書や四半期開示も任意であり、上場維持に必要な手間やコストが圧縮できる。ただ、上場に関する明確な基準がない代わりに、東京証券取引所から認証を受けたJ-Adviserという会社が、上場審査を実施するのが特徴である。
TOKYO PRO Market上場のメリットとデメリット
TOKYO PRO Market上場のメリットとしては上場による社会一般からの信頼性・安心感が向上することにより、資金調達や取引先の開拓、人材募集がしやすくなる点でメリットがある。一方でデメリットとしては一般市場よりも対象とする投資家が少なくなるため、株式の流動性は一般市場に比べて低く、その分資金調達がしにくいという点が指摘されている。
分かりやすくいえば、TOKYO PRO Marketは上場することにより一般市場同様に社会的信用の向上が見込めるものの、情報開示が一般市場に上場した企業に比較して限定的になるため、市場参加者の限定とその影響により流動性も限定されてしまうというハンディキャップもある市場といえるだろう。
ポジション的に一般市場への上場を目指す企業のファーストステップ的なものであるといえるだろう。
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