先日、自民党が「失言防止マニュアル」を作成して配布したと報じられ、話題となった。
逆に言えば、そのくらい「失言」とそれに対する批判・非難が多い証といえる。
そうした騒動を見せられると端から見ている立場では「失言」をした方はもちろん、非難する側にもネガティブな印象を抱いてしまう。「政治不信」という言葉は古くからあるように、批判・非難の応酬を見せられるとその世界全体の印象が悪くなってしまう。
ASAのPOV(基礎講座)を受講した際、ASAの倫理規定の中に「他の評価士の名声の保護」の義務があることを教えられた。どういうことかというと、他の評価士が不正あるいは不適切な行為を行った場合でも、公然と批判するような行為は慎み、ASAに対して適正な処分を求めるように行動しなければならないということである。 米国の評価人団体は民間の組織であるから、ブランディングには力を注いでおり、評価人の名声の保護、そしてライセンスや協会のイメージや品質の保護に対する会員への要請も高いと端々に感じる。 もちろん、どこの世界でも足の引っ張り合いはあるから、アメリカに行って実際に業界を除いてみれば水面下の争いはあるに違いない。但し、倫理規定を見れば、サムライ達の足の引っ張り合いに対して真摯に向き合ってきた歴史があると推定できる。
評価というものは本質的に唯一絶対のものではなく、評価人と意見と判断に依って立つものであり、誰がやっても同じというものではない。したがって、特に評価人同士の見解の相違が生じやすい世界である。 複数の評価で見解が大きく異なる場合、ASAではReviewという専門分野があり、Reviewの資格を持った評価人が複数の評価のうち、どの評価書が最も説得力、妥当性が高いものであるか審査する仕組みがある。 ASAの機械設備や事業評価が展開途中である日本においてReviewの登場はまだ先になるのではないかと思われる。 評価人としてのプライドを持つことは大切であるが、それが他者への不寛容になると争いが起こり始める。足を引っ張り合うサムライ達に対する世間の目は冷ややかになることは間違いない。"評価に100%はない"を自ら肝に銘じる必要があることを感じると共に、日本の機械設備評価の世界で不毛な足の引っ張り合いが蔓延しないことを祈るばかりである。
フロンティア資産評価研究会 松浦 英泰
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